「木村さん、試合のガウンやトランクスは青ですけど、青色がお好きなんですか?」
「んー。まあな」
等間隔に連なり流れる鉄の粒。そのうちの一つを緩やかに走らせながら木村が出した回答はにとって少し意外だった。
試合を共にする相棒として彼が選んだトランクスは鮮やかなエメラルドブルー、ジムを訪れればたいてい水色のジャージやTシャツでを出迎え、私服も寒色のイメージが強い。そんな木村からは肯定の答えが返ってくるとばかり思っていたからだ。
「よく選ぶ色ではあるよ。青とか緑とかしっくりくる感じするし」
「ふむふむ……ちなみに今日は黄色のシャツなんですね」
そう言ったの隣でハンドルを握る腕は本日、落ち着いたイエローのストライプシャツに通されている。
「……ヘン?」
「いいえ、お似合いです!ただ木村さんがこういう色着てるのあんまり見たコトない気がして」
「それ言ったらちゃんだって今日青着てるの珍しくねえか?」
「えー?」
投げかけたハズの問いかけが思わぬところで舞い戻りは丸い目で洋服の肩あたりをつまんで確認する。動きに合わせて柔らかに波打ったワンピースが、反射したカーステレオのシルバーを深い藍色に染め上げた。
「黄色とかピンクとかいっつもキレイな色着てるなーって思ってたんだよなオレ」
「こういう色は……ヘンですか?」
「全然。ちゃん元がいいから何色でも似合っちまうって」
「それは木村さんの方ですよ」
「……なんだよそれー」
照れ隠しか、ほんの少しむっとした木村の声に引き寄せられは自分の洋服から顔を上げた。目に飛び込んできたのは窓の外に広がる青空、眉間に皺の寄った横顔と黄色いシャツのコントラスト。その色合いにはふと、彼の部屋で見た大きな水槽を思い出した。
様々な体色を持つアロワナの中でも彼のペットは輝く黄色。意外と?本当はそんな明るい色が好きなのかもしれない、と新たな発見をは密かに心の中へ書き記すのだった。