「ブレンドコーヒーS一つお願いします」
今日も今日とてレジに立っているお兄さんは、昨日の嫌味を根に持っているのか私の顔を見ると仏頂面からあからさまにむすっと顔をしかめ、もう値段すら言わず黙ってカップをカウンターへ置いた。普段のクールな接客態度からしてそういうのは受け流すタチかと思っていたけれど意外と感情豊かというか、しっかり嫌な思いしてたんだこの人。
本当なら昨日に増してイラッとするところだけど、ただ100円玉と空の紙カップを交換するだけの間柄だった店員さんのパーソナルな部分が垣間見えた気がして、正直怒りよりも嬉しさのほうが上回ってしまった。別にお兄さんが意外とカッコいいことに気づいたからではない。決して。言うなれば宇宙人との交信?アンノウンの指先にほんのちょっぴり触れたような……さすがに失礼か。
そんなことを考えながら財布の中をまさぐり、紙切れ一枚をトレーに乗せる。お兄さんはため息とも取れるような大きい深呼吸をして、これまた無言でお釣りを置いた。
それにしてもここまで顔と態度に出すなんて接客業でそれはどうなの。

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