※軽い独自設定有・一歩×久美有・見方によってはほぼ木村さん夢です

高二の春。断り切れず引き受けてしまった図書委員会の集まりでボクは一つ上の学年である先輩と出会った。学生の頃はただでさえ上級生が大人びて見えたのに真面目を絵に書いたような見た目の先輩はボクの目に殊更大人っぽく映り、月に数回訪れる放課後の貸出当番でペアになった時は無意識に背筋が伸びたものだ。
しかしそんな雰囲気とは裏腹に先輩は毎回こっそりと通学バッグにお菓子を忍ばせ、難しそうなハードカバーでカモフラージュをしながら少女マンガを読んでいるような人だった。
「これ、口止め料ね」
先生の目を盗んで口に放り込んだアメ玉の甘い匂いは、図書室で過ごすボクの放課後をガラリと変えてしまったのだ。
クラス替えをしたばかりというコトもあり友達のいなかったボクは、当番の日に先輩へ話しかけるようになった。鷹村さんとの出会いもちょうどこの頃で、とにかくボクシングのコトを誰かに聞いてもらいたかったのだ。先輩はさほど興味も無かったであろうボクの話をいつも熱心に聞いてくれた。それが余計に嬉しくて、クラスメイトもジムのみんなも知りえない先輩との密かな繋がりは誰かに言いたいような、けれど誰にも知られたくないような……今まで感じたコトのない特別な気持ちにさせた。
だけど夏が過ぎ、受験や就活の迫った三年生はあっという間に委員会を引退していった。それは同時に先輩と過ごす時間を断たれたコトを意味していた。

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