3年生になって
とクラスが離れた。
「せっかく付き合えたのに越野君と違うクラスで寂しいな」
クラス発表を見た後、ついこの間彼女になったばかりの
が下を向いて泣きそうになっているのを見て大げさな、正直思った。
そりゃあオレだって残念ではあるけれど、もう付き合ったんだから二人で帰ったりとか遊びに行ったりとかそーゆーのはこれから増えるに決まってるし、クラスが別になったくらい些細な事じゃねーかって。そう思っていた。
そんな始業式の日から一週間。いまだに不服そうなアイツの頬をつねって、今日も四クラス先の自分の教室へカバンを下ろす。
HRが終わって、一限目の授業も終わって。二限目の授業で使う教科書やノートを出すのと一緒にチョコ菓子の箱から銀色の小袋を取り出した。甘ったるいイチゴの匂いがする中から一本中身を引き抜き、細長いそれを食いつつ後ろのロッカーに入れっぱなしの資料集を取りに行く。
は授業と授業の合間にいっつも甘い菓子ばっかり食ってて、二年の頃はたまにオレがなんか食ってると「越野君なにそれ!」とすぐに駆け寄ってきた。んで毎回一つ分けてやるんだけど、好物のコレだけは「一本ちょうだい」と言いながら必ず二本持っていった。
今はオレが何を食おうが
は駆け寄ってこない。違うクラスだから。
一年前は進んで買いもしなかったピンク色のチョコレートは一体誰の目を惹きたくてここにあるんだろうか。
〝もう付き合ったんだから〟今更必要ないのに無意識に染みついて抜けない癖の理由を問答無用に突き付けられた気がして、久々に一人だけで食べきった包みを力任せに丸めカバンへ押し込んだ。
「新学期」
2023/04/16・2023/05/05加筆修正