※夢主の過去設定ガチガチに組んでいます



「ねえレオリオ!さっきの信号右!!」
「るせェな。別れ際のドライブくらいちったぁ付き合えよ」
「バカバカ!私最終便乗るって言ったよね?!飛行船乗り遅れたらどーしてくれんのさ!!」
「ならしばらくこっちに居りゃいいじゃねーか。なーんも予定ねーんだろ?あと2週間オレんちに泊まって、一緒にヨークシンへゴー!ってな」
「はぁ?!あのねぇ、だいたい何でレオリオの家に泊ま……」
「わりーがやっぱ送ってやれねえ。たかだか半日で惚れた女をおいそれ帰せるかってんだ!!」



夕陽に照りつけられた車が空港の目前でUターンしてから日付さえ変わる間もなく、私は参考書や問題集が雑然と置かれたこの部屋の一部に成り果ててしまった。
8月の熱帯夜と、行為の直後で火照った体に冷たいミネラルウォーターを流し込む。
こんなことになってしまったのは成り行きだ、「成り行き」。嘘。実際はこうなったらいいなって私もレオリオも望んでいたからこうなっただけのことだ。

「実はね。こっち来る前、サンドルフォードの仲間に会ってきたの」
汗の引いた体は思いのほか冷えてしまい、私は積み上げられた本を濡らさないようにペットボトルをサイドテーブルへ置いてからそそくさとベッドに潜り込んだ。
「ずっと探してたって昔の仲間……見つかったのか?!」
「うん。二人」
「マジか!よかったじゃねえか!」
「ありがと。隣町の教会でね。……綺麗に花飾ってもらってたよ」
そう言ったらベッドのふちに腰掛けていたレオリオはテーブルランプのぼんやりした灯りでもはっきり分かるくらい顔を曇らせた。

サンドルフォード自治区。
長い内戦の果てに多くの地雷や不発弾が取り残され立ち入り禁止区域となった私の生まれ故郷。終戦前は親の顔も知らない孤児達がそこで身を寄せ合って暮らしていた。その中の一人が私だった。
「あーもー!そんな顔しないで?」
だってまあ、覚悟してたことだから。
あの辺じゃ大人だって簡単に命を落としてしまう。銃弾が飛び交い、強盗・殺人・人さらいも後を絶たなかった場所でむしろお墓がちゃんとあっただけ良かったと喜ぶべきかもしれない。
もちろん今回の訃報はすごく悲しいし残念だけれど、はぐれた仲間とこの先一人でも多く会えることを信じて私は私に出来ることをやり続けるしかない。

というようなことをもっと取り留めもなくぐちゃぐちゃと私は語った。
こんなのベッドの上でする話じゃないって分かっているけど、墓標に仲間の名前を見つけたあの日私が会いたくなったのはレオリオで、ゴンでもキルアでもクラピカでもなくレオリオじゃないとどうしても駄目で、今ブランケットのもう半分に滑り込んできた彼は私にとってそういう人だから、知ってて欲しいなと思った。
それと同時に、矛盾してるけど聞いてもらえなくていいとも思ってた。
だからいつもみたいに文句の一つも言えばいい。ハンター試験でゴンがハンゾーと戦ってた時とか今日車の中で私に言ったみたいにでっかい声で人の話、遮ればこれきりにするつもりだったのに、レオリオはガラにもなくただただ黙って私の話を聞いてくれて
「もう生きてないって分かってる仲間を探すクラピカはどれほど寂しいだろうね」
と私が言った時だけ
「この状況で他の男の名前出してんじゃねー」
と私の上に覆いかぶさってきた。私の手を握った大きな手はちょっと汗ばんでいて温かかった。
「ふーん。レオリオ案外ヤキモチ妬きなんだ」
「いちいち生意気言いやがってオメーはよ」
こうして一晩中こまっしゃくれだのなんだのと散々言われ続けたけれども、レオリオは決して私に「もう泣くな」とは言わなかった。

と とまれ、涙