「朝早くに申し訳ありませんゾルタン大尉」
形式上そう言えども銀河を泳ぐ《グルトップ》の中で「朝」を実感するのは時計の盤面が指し示す数字を見た時だけだろう。
時刻は午前7時過ぎ。
彼の寝室に宛てたコールはすぐに保留音が切れ、やがてやや掠れた声が私の名を呼んだ。
「エリク中尉か」
「はい。本日予定していた今後の航路についてのミーティングですが、艦長に急遽本部との会談が入ったため朝一で出来ないかと」
「ああ、構わん」
「艦長はすでにデッキにいらっしゃいます。メンバーが揃い次第開始したいとのことですので、大尉も支度が済めば……」
「さっさと来い、とでも言いたげだな。了解した。シャワーを浴びたらデッキに移動しよう」
そこまで理解しておいて何がシャワーだ。
いや、元より今回のミーティングに緊急性は無かったし早めの集合はあくまで可能な限りの話だけれど。
他の相手なら気にも留めなかった事柄に対してつい心の中で毒づいてしまったのは、ひとえに私が彼に対して快い感情を抱いていないためだ。
「そうですか。私も皆に連絡が済めば合流します」
自分本位で傍若無人の癇癪持ち。
私でなくともパンパンに膨れ上がったバッテリーへ好き好んで触れようとする者は……少なくとも私の記憶では一人しか知らない。
「
少尉にはこちらから伝えておく」
「よろしくお願いします。では」
そして言うが早いか衣擦れの音と共にその一人、「起きろ、
」と少尉を呼ぶ声が切断間際の通信に乗ってかすかに聞こえてきたのだった。
ら love affair