士官学校に入る前からずっと一緒に居た幼馴染の女の子。
青の一族とは何の関係もないあいつは俺の周りにいるような薄汚い笑顔を貼りつけただけの大人たち
(※サービス叔父さんは含まれない)と違って何かあるとすぐに、笑い、喜び、怒り、
そしてすぐに泣くやつだった。
あの頃の俺はなんにも分かっちゃいなくってどうすることも出来ずにそれを見て怒ったり責めたり、見ぬふりをしたこともあった。
だけど今は違う。
パプワ達と出会って言葉には表せない大切なものの多くを知った。今ではガンマ団という組織のトップにも立っている。肉体的にも権力的にも大きな力を持っていると思っているしある程度のものは、好きな女一人くらいは簡単に守れると思っていた。
だけどあいつは今も一人で泣いていて、俺はただそれを見ているしかできないでいる。
夜の明かりで鮮やかに彩られた街の一角、まるで街の影のようにひっそりと佇む暗い公園の中で
は一人俯いていた。
「
、まーた泣いてんのか」
は答えない。まあ、予想の範囲内だけど。
「おめーは男を見る目がねーんだよ、バカ」
だから俺にしとけばいいのに、と。
何度口に出そうとしただろう。
何度強引に自分のものにしようとしただろう。
しかしそんなことしたって何の意味をなさないのは分かっていた。
心の隙間に入り込むようにして例え
の心が動いたとしてもそれは本心ではなく、
寒空の下に突然放り出された人が外套を求めるのと同じ原理だ。
一時、寒さをしのげればそれでいい。
そして俺は外套になる気はない。
だから溢れる言葉を飲みこんで、
代わりに俺は
の隣に座って、両手で
の手をぎゅっと握ってやる。
梅雨特有の蒸すような生ぬるい風が吹く外の気温に似つかわぬ妙に冷えた手へ
俺の体温が移るたびにいっそこの想いも伝わってしまえばいいのに、と
心のどこかで思っていたが、冷えた手の持ち主は一向に目だけを熱くさせたままだった。
「あ、あたし……もっと最初か、ら シンタローみたいな人、選んどけばよかった」
隣の店から漏れる光で
の涙が七色に染まるのを、ただ、見ていたら13滴目の
緑色がぽとん、と落ちた時
が言った。
細い腕、首筋 シャンプーの匂い
まだ、まだ消えてはいない。
「1週間」
「それでも気が変わらなかったら仕事辞めて俺のところへ来い」
その唇に噛みついて離したくない衝動をギリギリのラインで踏みとどまって
握る手に力を込めた。
け 決して離さない
(もう、離したくない)