HappyBirthday!:May 21 



※夢主ちょっと特殊設定です※


初めてと会ったのは親父の催す国際パーティだった。
親父の旧友の娘だったは濡れたような長い黒髪、上質な白桃のように白い肌、こぼれ落ちそうな瞳と対照的に作りの小さな唇。アジアンビューティーを絵に描いたような姿はランドで見たどのお姫様よりも美しくて俺は一目見た瞬間恋に落ちたのだった。

「お、おおおおお俺、が好きだ!!」
「リキッドさん、私も……」

それからはどうにかこうにか機会を見つけてはに会いに行って、親父のパーティや会議にくっついてではなく個人的に二人で会うようになって。お互い気後れなく話せるようになったとき、お気に入りの海岸に案内して想いを伝えた。
夕暮れの中でも分かるくらい真っ赤になって逸らした視線や、か細い返事、 の一挙一動は今でも克明に脳裏に焼き付いている。

そしてその後の出来事も。
ええ、ええ、忘れられるわけないですよ。


「私も好き、です。

でも私、本当は人間ではないんです」

「…………………はぁ?!」
「今まで隠していてごめんなさい!私、実は閻魔大王の娘なんです」
「えん、ま?」
「ご存知ですか?地獄の神、閻魔」
「かみ……??」
「もうそろそろ私も地獄の仕事を手伝わなきゃいけないって、だから人間のことをもっと知りなさい、って父に言われて地上に出てきたんです」

「私はリキッドさん……人間にとっては『永遠』と呼べるくらいの、とてもとても長い時間を生きます。だからリキッドさんとお付き合いはできません。本当にごめんなさい。……さようなら!」

これが俺、リキッドが経験した最大にして最悪の失恋だ。




「ひどいだろ?同じ振るにしてももっと違う言い方があると思わねぇか?」
「ははは!リキッドらしいな!」
「俺らしいってなんだよ!」

月日が経ち、俺の背をゆうに追い抜いたパプワが話を聞くなり豪快に笑い声を上げた。

「閻魔と人間の見分けもつかんとはリキッドらしいって言ったんだ」
「だーかーらー、は俺を振るためにわざと……」

だが、パプワへの抗議を最後まで言い切る前にパタパタとたくさんの軽い足音が近づき、すぐ近くで止まった。

「もうパプワ様!リキッド様の誕生日パーティのご準備、ちゃんとお手伝い下さいまし!今日はヨッパライダー様もいらしてくださいますのよ?」
「パーパ、ちゃんとマーマのゆうこと聞かないとだめだぞー?」
「おお、すまんなくり子」

頬をふくらませたくり子ちゃんとちみっこ達が俺の隣に座っていたパプワの腕をぐいぐいと引っ張ってゆく。困ったように笑うパプワの顔は言葉とは裏腹にとても幸せそうだ。

「まったくパプワ様ったら楽しそうに何を話してらしたんですか?」
「閻魔大王の娘のことだ。リキッドが知り合いなんだと」
「だからちげーってば」

するとくり子ちゃんはぽけっとした顔を見せ、ぽんと手を合わせるとにっこり微笑んで俺に言った。

「あら?リキッドさん、閻魔様の娘さんとお知り合いですの?ちょうど今日、お役就任でご挨拶にくるそうですわよ?娘さんも地獄でお仕事されることになったんですって」
「おい、それドッキリか?閻魔大王って嘘だよな?くり子ちゃん!」
「何言ってるんですかリキッド様。ヨッパライダー様が一緒に連れてこられるって……あっ!!!」

突然ドーンと大きな衝突音が島中に響き、地面が揺るぐ。時間をおいてパラパラと上から水が降ってくるのは雨ではなく海水だ。そしてさらにワンクッション置いて香ってくるのは紛れもないアルコール臭。

「やーん!もうヨッパライダー様がいらしてしまいましたわ~!」
「はっはっは、どうやら反対側の海岸のようだな」

もしかして、もしかすると。
掴んだわずかな期待はみるみるうちに膨れ上がってはやる気持ちを抑えぬまま反対側の海岸へと全速力で走ってゆくとヨッパライダーの背中から砂浜に降り立ったのは、紛れもなくあの時と同じままの。

……?ー!!」

「リキッド、さん?うそ……」


見開いたの目が全てを物語っていた。
何十年も前からひとつも変わらないの姿めがけて
俺はあの時と同じ白い砂浜へと駆け出した。


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