嘘みたいな話だけど、いわゆる「不良」のイメージをそのまま具現化したような見た目の虹村くんが今おっかない顔でメンチ切ってるのはケンカ相手でも生活指導の先生でもなく、パフェのメニュー表である。
「オメー、どれにすっか決まったのかよ」
「もちろん」
「マジかァ~~!」
2つにまでは絞れたんだけどよォ、と悩んでいる虹村くんをよそに、私は涼しい顔で水を一口飲んだ。
確かにここのお店はパフェメニューの豊富さがウリだから、数ページに渡ってぎっしり写真が載っている中から1つを選ぶのは決断がニガテな虹村くんじゃなくても一苦労だろう。
しかし私は店頭のポスターで見つけてしまったのだ。私の大好きなあの悪魔の四文字を。
「よーし、おれは決めたぜ!」
ほどなくして前かがみでメニューを見ていた虹村くんがどかっとソファーにふんぞり返った。
「虹村くんはどれにするの?」
「
は?」
「虹村くんの後に言う~」
「じゃあおれも~」
なんてこねくり回すどうでもいい会話はクリームみたいに口溶けが良いのだが、欲張りな私はそれだけじゃちょっぴり物足りない。
どうせなら何かトッピングも欲しいところだ。たとえば?いちごや、スナックだったり。
「じゃあせーので一緒に指差そう?」
「お、いいぜェ」
メニューをテーブルの真ん中で開くと虹村くんのサクッとした返事が跳ね返る。
「いくよ、せーのっ!」
こうして2つの指先はストロベリーチップスとハートスナックのたくさん乗った『いちごスナックパフェ(期間限定)』に吸い寄せられたのだった。
chip&snacks
2019/10/11