ククルーマウンテンでゴンとキルアの2人と別れ、行き先の飛行船が到着したクラピカを見送り、私の乗る飛行船の到着を知らせるアナウンスが流れた時、無理やりポケットへねじ込まれたのはくしゃくしゃになった小さな紙切れ。私は自分の席に着くなりすぐに殴り書きの11桁を携帯電話に打ち込んだ。1コールで「早すぎんだろ」って呆れたように笑う声を聞いて胸の奥が切なく痺れたのを今でも覚えてる。本当は後になって連絡する勇気を失くすのが怖かっただけなのに、素直に伝えるのが恥ずかしくて「そっちだって出るの早すぎよ」なんてその時はうやむやにして取り繕った。
それからちょくちょく連絡を取るようになり、今ではお互い特に用事がなければ毎日寝る前に電話するのが日課になっている。
「こんだけしゃべってると久しぶりって感じしねーな」
「ほんとにね」
そんな会話を交わした昨日までは彼の意見に完全同意していたけど、いざその日がくると情けないことに私は朝から気もそぞろで、約束の時間の30分以上も前から待ち合わせ近くのカフェで暇を持て余していた。
「せっかくだからちょっと早く来てごはんでも食べようよ」
なんて大胆なお誘いを、いつかの私はよくも言えたものだ。いや、私の抱く感情が勝手に難易度を押し上げているだけで、本当は大したことではないのだけれど。
本日何度目かの鏡チェックを終え、口に運んだアイスコーヒーのグラスがとっくの昔に空だったことを思い出していよいよ手持ち無沙汰になった私は壁にかけられたフランクミュラーめいたデザインの時計をぼんやり見つめていたのだけれど、ふと視線をずらすと窓越しに群衆から頭一つ飛び抜けた影が見えて慌てて店を出たのだった。
「
!……もう来たのかよ!」
「レオリオこそ!」
別れの月の裏側で
2019/10/11